テキストとメソッド

[2014年1月5日追記: スペイン語のテキストや学習書、参考書類の出版情況が、この記事を書いた時点とは変わって来ているようです。(「テキストとメソッドⅡ」)]

ところで、スペイン語の「あいうえお」は、普通のテキストだと「序章」のような所に書いてある事を、延々と横丁的?アプローチで書いてる訳ですが、それは前にも書いたように、この「序章」が、スペイン語のピラミッドの石をひとつひとつ積んで行く為のセメントになるという事、そしてそれを「自分で考えながら作って行く」というプロセスが、「スペイン語脳」を目覚めさせるのに有効なのではないかという発想で、普通の教科書よりも時間をかけてやってる訳です。

でセメント作りが終れば、いよいよ石を積んで行かなくてはいけないので、僭越ながらスペイン語の教科書とスペイン語学習のメソッドについて書いてみました。

先ず教科書。
今出ている本を全て実際に手に取って見た訳ではないけれど…書店などで目につく速習本? 大体において、スペイン語がほんの短期間にマスターできるような、かなり非現実的なキャッチフレーズが付いてますね…

今はネット販売などもあり、量的には多分、昔より沢山の本が出ていると思う。
けれど、簡単な文法説明が、でもスペイン語文法の全体に渡ってなされていて、そして手頃な値段と大きさの本というのが、中々見つからない…のだ。

昔は都心のちょっと大きな本屋さんに行けば、スペイン語の教科書が、何種類か置いてあった。最低限の文法だけ、でも一応スペイン語文法の全体が見渡せる本があった気がするのに…ああいう本はどこに行ってしまったのか?
スペイン語の本場(?)スペインでは、スペイン語文法に対する考え方が30年余り前に転換したようだ(*注1)。そしてスペイン語だけでなく教育体制全般が、この20年位で大きく変った(*注2)という事情はあるのですが…でもスペイン語自体が変った訳じゃないのにね…

今スペイン語を始めたい、そして取り合えずは独習するしかない、という方は、とにかく自分が使い易いと思う本を1冊選んでみて下さい。速習本の中にも、そのキャッチフレーズを鵜呑みにするのでなければ、使えるのがあります。分からなければ、とりあえず値段で選ぶというのもアリです。
で少し進んだところで、他のものと比べたり、その他色々な手段で情報を補って行く、つまり最初の1冊だけに頼らないという事です。
少しやってみる事によって、自分には違うテキストが向いていると分かったり、又基本的にはそのテキストで良くても、別のテキストの別の説明と併せて読む事によって、自分なりの理解ができるという事もある。更に中級以上になれば、スペイン語圏で出版されている「国語」の教科書などにもアクセスできる。ネットもあるし、手に届く本の数は、昔よりずっと多いのです。

そして辞書も、何でもいいので1冊、自分の使い易そうなものを用意して下さい。

次にメソッドですが…
学習メソッドについては、文法はしっかりしたテキストを使って、それを授業で補足説明して貰いながら、時にネイティブ・ティーチャーと実践の会話練習を交えて行ければ理想的、なのだけれど…

ちなみにこのブログの管理人がスペイン語を初めて習った所では、週2回(だったか?)の夜の授業、3ヶ月のコースで、初級文法を一通り終った。文法は1回1時間で、先生は薄っぺらいテキストを、ほぼそのまま読んでるだけです。(で生徒は、その最低限の内容を家で予習復習して、とにかく必死で覚えて付いて行くという…

…そして文法の他に毎回1時間、ネイティブ・ティーチャーとの会話の練習が、全くの初心者の段階からあった。当時それを担当していた先生が素晴らしく、そのお陰でスペイン語にハマってしまったのだ?

その先生の授業は、所謂直接メソッドという方法で、先生、日本語もできるのに、授業では殆ど使わない。生徒たちの分からないところを、ジェスチャーなどを交えたスペイン語でやり取りしながら分からせて行く、そしてたま~に、非常に効果的なところで日本語の片言を入れたりする。
他より安いという理由で選んだコースで、そんな先生に、生まれて初めてのスペイン語を習えたという事は、今考えると非常にラッキーだった。

但しこの直接メソッド、ネイティブなら誰でもできる訳ではないので、要注意です。
それは、日本語のネイティブである日本人が、外国人に日本語を、日本語で教えられるか?と自問してみれば、明らかででしょう。
例えば、日本語の「くれる」と「あげる」と「もらう」の違いを日本語で、それを知らない外国人に説明できるか? と言われたら、或いは「空は青い」と「空が青い」はどう違うのか? と質問されたら、どう説明しますか?

直接メソッドは、時に非常に刺激的で有効なメソッド。でも、本当に素晴らしい直接メソッドの授業を受けた経験から言うと、初心者にそういう授業のできる先生はそんなに多くないと、ほぼ断言できる。語学を専門にする人ならいいかというと、そうでもなく、現に上の先生の本職はスペイン語圏の某国大使館員で、ある時ピンチヒッターで来た日本語ペラペラの語学の専門家よりも、教え方がうまかった。先生個人の想像力、理解力、表現力などの資質が、非常に優れていた!という事です。
更にその教室では、直接メソッドによる会話のレッスンだけでなく、日本人の先生による文法の授業とセットになっていた、という点が結構大きい。猛スピードでしたが!
…でこのコースも今は開講されてないようなのだけれど…これは大規模な語学学校チェーンなどに押されたせい??…ですかね???

その大規模なチェーンの語学教室にも、勿論個々にいい先生がいる可能性はあるのですが、但しテレビCMなどで耳にする「ネイティブ・スピーカーが言葉を覚えるのと同じプロセスで」というような謳い文句には、ちょっと「?」を感じる。何故なら、ネイティブ・スピーカーの赤ちゃんが耳にする言葉の量というのは、ネイティブでない大人が語学学校に週2,3時間通って耳にできる量とは桁違いに多い! つまり情報量が決定的に違うからです。

例えばスペインの赤ちゃんは、朝起きてから夜寝るまで、更に眠ってる間も、家族が赤ちゃんに話しかける言葉だけでなく、家族同士の会話、テレビ、散歩の途中で道を行く人のやりとり、お店や公園、その他色々な所で耳に入ってくるスペイン語を、無意識の裡に聞いている。ネイティブの赤ちゃんは、スペイン語脳を目覚めさせ、開発して行く為の、正に最高の環境に居る訳です。
どこにいても、そして何をしていても、スペイン語が聞こえて来る、しかも日本語のやりとりなんて先ずどこからも聞こえて来ない環境を、日本で作るのは先ず不可能と、これもほぼ断言できます。

で言ってみれば、その「入って来る情報」量の違いを少しでも補って、できるだけ効果的にスペイン語を学習するには、どうすればいいか? どうしたら、少しでも早く「スペイン語脳」を目覚めさせ、それを開発して行く事ができるのか? というようなアプローチで思いついた事のひとつが、「スペイン語のあいうえお」だったのです。

結論としては、教科書もメソッドも、そして個々の先生も、キャッチ・フレーズや謳い文句に惑わされる事なく、自分の目と耳、そして頭で確かめながら進むしかないという事で…いい教科書の紹介や教室選びのポイント、「こういうメソッドがいい」というような話を期待してた方、ごめんなさい。
でも逆に、自分が選ぶという姿勢があれば、どこででも自分の勉強ができるのです。近くに適当な教室がない、時間がないという方も、諦めないで下さい。スペイン語を勉強したいという気持ちを持ち続ければ、必ず道が開ける筈です。

最後に、このブログは、あくまでも学習書、つまり教科書に書いてある事を補足したり、ちょっと違うアプローチで説明したりという、一種の参考書みたいなもの、と思って下さい。

で、この参考書類も、或る意味では昔の方が充実していたような気がするのだけれど…試しに、かつて自分自身が使って役に立ったと思う参考書を、今アマゾンで検索してみたら、5600円の古書が一冊出て来た!…手元の本と比べてみると…な、なんとっ、元値の4倍以上の値段が付いてるではないですか! なんだか急にリッチになった気分…(・・?

*注1: 1980年当時、マドリッド語学学校のスペイン語科で教えていたスペイン語文法は、留学前に日本で勉強して行ったスペイン語文法とは、時制などの用語が違っていた。他の国から来た留学生も戸惑っていたので、用語が変ったのは多分その少し前。丁度過渡期に留学してしまったらしい。でもこれも今考えてみるとラッキーだったのかも。
第二課程でテキストとして使われていたのは、当時のスペインの高校生が使う国語の教科書で、その中ではスペイン語の文法が、チョムスキーの生成文法という考え方に基づいて整理されていた。これも日本のスペイン語学習の現場では馴染みのなかった概念だった。
でその後、それ以前のスペイン語文法に基づいて書かれていた日本語のテキスト類は、徐々に絶版になってしまったのだろうと思う。但し記事にも書いたように、それ以前のスペイン語文法が間違っていた訳ではなく、整理の仕方が変ったという風に捉えた方がいいと思う。生成文法はかなり魅惑的な理論なので、いつか別の機会に触れたい。

*注2: マドリッド公立語学学校(Escuela Oficial de Idiomas de Madrid)は当時確かスペインの文部省直轄で、各課程の終了証には文部省の名前が入っていた。現在はマドリッド州の管轄になっている。(HPを見たら写真と地図が出て来て懐かしかったので、ご参考にリンクしました。)
一方スペイン語教育とスペイン文化の普及を目的に掲げたセルバンテス文化センター(Instituto Cervantes)が、1991年、スペイン政府によって創設され、世界各地でスペイン語教育事業(?)を展開している。昨年東京にもできて、書店もあるようなので、これもご参考にリンク(書店は民間の会社が運営)。

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