2-3. esca’l’abajo japonés 「ニッポンコガネムシ」

初めに断っておきます。タイトルの “escalabajo” という単語、スペイン語の辞書で引いても出てきませぬ。
綴りが違ってるんだもんね。正しくは ‘escarabajo’ であります。

今から25年ほど前、初めてスペインに行った時に住んだ家具付きの貸家には、古いテレビが置いてあった。
スペイン語でピソと呼ばれるフラットには3寝室あって、アメリカ人とスイス人の女性が住んでるはずだったが、夏休みで2人ともヨソへ行ってた。
で、来たばっかりのスペインの、誰もいないピソでテレビをつけてみたら、西部劇をやっていて、クリント・イーストウッドがスペイン語で喋ってた。日本のテレビで同じ映画をやる時は日本語で喋るわけだから、考えてみれば当たり前なんだけど…。

話がわき道に逸れてしまったけど、escarabajo japonés というのは、当時テレビで放映されてたアニメのキャラクターで、ミツバチのような縞のある体に、顔は出っ歯で、つり上がった細い目にめがねをかけた虫がブンブン飛びながら、いつも "escarabajo japones tiene cinturón negro de karate…." みたいなことを言って登場する。
「みたいな」というのは、当時の私には、 ‘escarabajo’ や ‘cinturón’ の前に冠詞が付いてるのかどうか、聞き取れなかったからだ。イエ、今でも深く追求されると困るけど、まあこの場合は、どちらも定冠詞が付いてる、と思います。つまり本当は el escarabajo japones tiene el cinturón negro de karate….と言ってたんでしょう…多分?

細い目に出っ歯、メガネをかけて、そして空手の黒帯保持者(?)というのは、当時の外国人が抱く「日本人」のひとつのステレオタイプだということは容易に想像できた。役回りは「悪役」ではなく、どちらかというと主人公たちを助けるというか、主人公たちの敵役を空手で負かすというか、そんな風な役回りだったと思う。

辞書を引いてみると、 ‘escarabajo’ は「コガネムシ」だとか「甲虫類」だとか出ている。
つまり「ニッポンコガネムシはカラテのクロオビだぞ…」みたいなこと言ってるわけか…でも、アニメのそれは「ミツバチ・マーヤ」を醜くしたような姿で、どうも納得できない。

ある時私は、陶芸学校で知り合った若いスペイン人たちに聞いてみた。「ほら、あのテレビ・アニメでさ、エスカラバホ・ハポネス・ティエネ・シントゥロン・ネグロ・デ・カラーテって言いながら飛んでくる虫ね、あれ一体どういう虫なの?」
ひとりが「いや、ただの虫の名前だよ、エスカラバホ・ハポネスっていう名前の虫なんだよ」と答えたが、何故かみんな気まずそうに、そして焦ってるように見えた。

興味と時間のある人は、ここでスペイン語辞書を引いてみてください。
‘escarabajo’ に「チンチクリン」というような意味があり、それがどちらかというとスタイルの悪い人を指すのに使われ、そしてそれが「日本人」と結び付けられていることを、日本人の私にどう説明すればいいのか…ストレートに言うのは悪いような気がしたのだろうと想像できたのは、あとになってからだった。

《更に興味のある人はスペイン王立アカデミーの辞書も引いてみて。一体どういう姿の虫なのか、見てみたくなるよ。もしかして…フンコロガシみたいなの? いずれにしても、ミツバチみたいではないと思うんだけど…》

もう一人が「ああ、あのアニメはシンパティコだ」と言って、ちょっと固まってた場の雰囲気がほぐれた。
更に別の一人が、「そうそう、おまけにあのエスカラバホ・ハポネス、 "R" を全部 "L" で発音するんだよね!」と言って、みんな笑った。

なんとまあ!、日本人が"R"と"L"の区別ができないってことが、そんなにも世界に広まってるとは知らなかったよ。でもどっちかって言うと、日本人がヘタなのは "L"の方だけどね。
"R"が発音できないのは中国人? 
まあ詳しいことは言語学者さんにお任せするとして、スペイン語の"L"は舌先を前歯の裏につけて発音し、"R"はどこにもつけないで、つまり舌先が殆どどこにも触れないような、言わば宙に浮いた状態で発音する。それを更に強く震わせたのが巻き舌の"R"で、舌先を更に喉の奥の方に持って行くとフランス語の"R"の音になる…

実は日本語の「ら」「り」「る」「れ」「ろ」はスペイン語の"R"と"L"の中間くらいの音であり、どちらでもない。日本語には"R"も"L"も、そのどちらもないのだ。だから聞いても違いが分からない。

逆にスペイン人に、日本語の「ラリルレロ」の入った言葉、たとえば「どろぼう」だとか「りんご」だとか言って当てさせると、ある者は"R"に聞こえたといい、又ある者は”L"に聞こえたといい、そして別のある者は”D"に聞こえたという。スペイン語には日本語の「ラリルレロ」の音は存在しないから、聞き取れないのだ。

音の違いを聞き分ける耳というのは子供のうちにできるらしく、大人になってから幾ら練習してもダメだと言われるけど、でも最初からあきらめちゃいけません。どうせダメだからってイイカゲンに発音してたら、いつまで経っても区別ができない。困るのは書く時にも間違えちゃう、ということだ。

実際、出版されてる教科書や、スペイン語のホームページなどでも、結構間違えてます…
最初から、たとえ耳で聞いて違いが分からなくとも、発音する時には区別するように気をつけていると、なんとなく分かるような気がするケースも出てくるもんです。ま、たまに、ではあるけど。

特に日本人がイイカゲンに、つまり"R"も"L"も日本語の「ラリルレロ」で発音しちゃってる時には、テキメンに分かるようになる! ほんとだよ!

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